目次
dr09 — 第2作『渡り火のトモリ ―片道の海―』フルプロット拡張案(v2案)0. この作品をひとことで1. 開幕の状況(精密化)2. 構造の提案 — 「百日」を三部作の拍にする(構造レベル・オーナー承認事項)3. トモリのアーク — 「信じてもらう側」の追体験4. 新キャラクター(人物設計・ペルソナの種)イサナ(24・男・ミナトの防人)——モヤイの息子ヨミ(70代・女・ミナトの結い師の長)サチ(19・女・ミナトの船頭)敵格: 引き潮の群れ/「引き手」5. 既存キャラの第2作アーク6. 章立て詳細(全10章・各章=事件/関係の不可逆変化/開示/引き)7. 街の分裂の構造(第1作「協力の輪」に対応する「説得の輪」)8. 開く謎・閉じる謎(v1継承+精密化)9. 【凍結・不変更の確認】第1作への接続点(PLOT_2§8)10. 【新設・凍結候補】第3作への接続点(オーナー承認で凍結)改訂ログdr09 — 第2作『渡り火のトモリ ―片道の海―』フルプロット拡張案(v2案)
作成: 2026-07-05 / 作成者: 別窓(物語設計担当) / 位置づけ: 提案書
(採用時はメイン窓が STORY_PLOT_2.md を v2 として改訂。**§8「第1作への接続点」は凍結のまま
一字も変更していない**——本書はその上に物語を肉付けしたもの)
目的: オーナー指示(2026-07-05)「三部作までしっかり物語としてのプロットを。それを踏まえて
第1作に伏線と要素を入れる」。第1作へ入れる要素の一覧は dr11。
0. この作品をひとことで
「助けに行って、帰ってくる話」。第1作が「守り切る」物語なら、第2作は「届けて、戻る」物語。海が片道になった世界で、往復——行って、帰ってくること——を取り戻す。それは物流の話ではなく、「助けた相手と、また会える世界」を取り戻すことである。
- テーマ: 届ける(信頼の拡張——個人間の火の預け合いを、街と街の間へ)
- 問い: 「他人を助ける余裕は、あるのか」
- 答えの形: 余裕があるから助けるのではない。助け方を発明する(ウシオの保険=善意を勘定に載せる方法)。「火は、囲うものじゃなくて、届けるものです」
1. 開幕の状況(精密化)
迎え潮から約半年。復旧の冬が明けた最初の春(トモリ16歳)。
- フユナギの現在地: 堤は直りかけ・蝋と芯の備蓄は薄い・人手は百日ですり減ったまま。だが街の空気は変わった——灯し屋の看板から「見習い」の二文字が消えている(第1作の成長の持続を、冒頭の一枚の画で示す。カヤが黙って書き換えた)。
- トモリの現在地: 「預かれる灯し屋」になった。ただし存在レベルの後ろめたさ(受け取ってばかり・火が減らない)は未解決のまま静かに残っている(第3作の持ち越しを明示的に管理——本作でトモリは一度だけこの疼きに触れるが、解かない。§6終章)。
- ある朝、見慣れぬ帆がひとつ(第1作大団円の遠景F-3の回収)。まとまった数の漂流者——隣海の街ミナトの民、十七人。彼らは言う。「迎え潮が、うちにも来る」。
- 序章の衝撃の二段目: 漂流団の中の若い防人の顔を見て、モヤイが網を落とす。
2. 構造の提案 — 「百日」を三部作の拍にする(構造レベル・オーナー承認事項)
第1作=フユナギの百日。第2作=ミナトの迎え潮まで、残り百日を切っている(漂流団が持ち込む期限)。第3作=海に返すまでの百日(dr10)。「百日」をシリーズの拍として三度打つ——題名の「百日の灯し屋」がシリーズ全体の看板になる。
- 内訳(案): 準備と分裂に三十日(フユナギ)/往路に二十日(海)/ミナトでの防衛準備に四十日/迎え潮・帰路に十日。今作の百日は「ふたつの街と海」に割られる——第1作と同じ拍で、まったく違う地図を旅する感覚を作る。
3. トモリのアーク — 「信じてもらう側」の追体験
- 第1作で得たもの(頼れる・預かれる)はリセットしない(凍結原則)。今作の課題は外にある:自分の街の外で、灯し屋は何者なのか。
- ミナトに着いたトモリたちは「他所者」になる——第1作でイサリが立っていた場所に、今度は自分たちが立つ(逆再演)。証のない善意は疑われ、飯は出ず、門は閉じている。トモリは初めて「あの時の街の人たち」の側から自分を見る——そして第1作の答えをもう一度、外国で実行する: 信じてもらえるまで、働く。
- 山場の台詞(予約): ミナトの子供に火を分けて拒まれる場面——「知らない人の火は、こわい」。トモリの返し: 「はい。……こわいまま、灯していいですよ」(第1作の共感ファーストの進化形。信じさせようとしない信じ方)。
- 終章、トモリはフユナギの浜で気づく——「届けて、戻ってくる」を選んだ自分は、もう「返しても返しても足りない子」ではない。……のに、胸の奥の後ろめたさだけが、なぜかまだ疼く(解かない。第3作への糸として一度だけ触れて閉じる)。
4. 新キャラクター(人物設計・ペルソナの種)
イサナ(24・男・ミナトの防人)——モヤイの息子
- 視点フィルタ: 海は方程式(父の「海との貸し借り」と対になる合理)。
- 口調: 寡黙だが父より理屈っぽい。「潮は嘘をつかない。読み違えるのは、人だ」。
- 欲求(表): ミナトを守る/裏: 帰って父に「ただいま」を言う——だが7年で言い方を忘れた。
- 感情の癖: 感情が動くと計算の話をする(「確率の問題だ」)。潮図の束を撫でる癖。
- NG: 感傷を口にする/父を「父」と呼ぶ(「フユナギの網元」と呼ぶ——再会の章まで)。
- 名の扱い: 第1作には出ない(§8-D凍結)。本作序章、モヤイが網を落とした後も互いに名を呼べない——名を呼ぶのは§8-D指定の瞬間「イサナ。……大きゅうなったの」が初。
ヨミ(70代・女・ミナトの結い師の長)
- 視点フィルタ: 世界は結び目(人も航路も「結べる/ほどける/固い/緩い」で見る)。
- 口調: よく喋る目利きの老婆——カヤと正対の設計(言わない老婆と、言う老婆)。ただし言うのは事実だけで、意味は言わない(「これは沖灯の結びだよ。——それだけさ」)。
- 役割: 芯守りの意匠の同定(§8-A凍結文言で)。渡り唄の歌い手(§8-B: トモリの子守唄と「同じ節」だとトモリだけが気づく——唄の内容は書かない・凍結)。
- 欲求(表): 十七人を生かす/裏: 結い直したい——渡りがあった頃の海を。
サチ(19・女・ミナトの船頭)
- 視点フィルタ: 世界は舵(すべて「取れる」か「流される」か)。
- 口調: 快活・負けず嫌い・言い切る。「海は、あたしの言うことしか聞かない」。
- 役割: 漂流団を率いて海を渡り切った操船の天才。イサリと張り合い(視る目vs取る腕)、のち「読む者(ミオ)・視る者(イサリ)・取る者(サチ)」の三人型が帰路の航路を通す。
- カガリとの対比: 彼の「軽さ」に対する「速さ」。ふたりの掛け合いは本作の風通し担当。
- 第1作には気配も置かない(§8-F凍結)。
敵格: 引き潮の群れ/「引き手」
- 海峡に巣食う空殻の大群と、その奥で帰り潮を狂わせる大型の何か。
- 本作では正体・目的を一切明かさない(第3作接続・§10で凍結候補)。「行きは通してくれるのに、帰りだけが読めない」という現象の人格化としてだけ描く。
5. 既存キャラの第2作アーク
- イサリ: 渡りの技術の解禁——操船の手が覚えている(記憶の部分回復・核心は戻らない)。「渡るために生まれた民」の誇りの回復。ミナトの海で、初めて「守る」でなく「渡る」ために目を使う——第1作で「盾」だった娘が、本作で「舳先」になる。
- ミオ: 読みが航路になる(潮見の家業の本当の形)。サチと組み「読む者と操る者」の型を発明——第1作で拾った「渡りのころの海図の写し」(F-13)が実地で使われる。
- カガリ: 隣海=古巣。ミナトの火消し組との再会(逃げた家業と向き合う章)。「預かる」の拡張——今作では物でなく道を預かる(帰路の殿)。
- モヤイ×イサナ(感情の背骨): 「網にかかったもんには最後まで責任を持つ」の7年と、「帰る潮を探し続けた」の7年が噛み合う。再会の演出は抱擁ではなく銛と潮図の交換(道具の男たち)。和解は言葉でなく配置——ミナトの迎え潮で、ふたりが同じ門に立つ。
- ウシオ(裏主役): 「勘定に善意を載せる方法」の発明——渡り再生を保険として設計する(帰らなかった船の家族に蝋が届く積立)。信じない人のまま、信じない方法で支える。終盤、彼は「勘定は合いませんがね」を言わない(合わせてみせたから)。
- カヤ: 留守を守る(出番最少・凍結方針)。出航の朝「……行っといで」だけ。※「湯が冷めるよ」の定型はここでも使わない(第3作終幕まで温存——F-10・dr11)。
- ホタル: 留守番世代の目(「ホタルも行く」と言って泣かない我慢をする)。第1作九章の「灯の教え方」がここで効く——彼女は留守の間、火を教わる側から配る側へ。
- オキヨ=飯の外交(漂流団十七人の胃袋を最初に掴むのは彼女)/タタラ=船金具を打つ(「漁具だ」と言い張る欺瞞の拡張)/ガラ=物資の目利き/センブリ=十七人の検疫と薬。
6. 章立て詳細(全10章・各章=事件/関係の不可逆変化/開示/引き)
| 章 | 題 | 中身 |
|---|---|---|
| 序 | 見慣れぬ帆 | 事件=十七人の漂着・「迎え潮が、うちにも来る」。変化=モヤイが網を落とす(顔を見た・名は呼べない)。開示=ミナトの存在・期限(百日弱)。引き=夜、モヤイがひとりで浜に立つ(第1作八章の反復——だが今度は待つ理由がある) |
| 一 | 十七人の客 | 事件=受け入れの軋み(蝋も飯も足りない)。変化=ヨミが芯守りを見る——「これは沖灯の結びだよ。海の真ん中の、灯台の街の」(沖灯の名の初出)。トモリの断片がひとつ疼く(子守唄——ヨミの鼻歌に足が止まる。理由は書かない)。引き=ウシオ「十七人ぶんの勘定、どこから出ます?」 |
| 二 | 帰り潮の帳面 | 事件=イサナの研究開示(手製の潮図・失敗した帰航の記録の束)。「行きはよいが帰りが読めん」の正体=帰りだけ潮が狂う(現象の言語化——F-4口伝の回収)。変化=イサリの渡りの技術が噛み合い始める(手が覚えている)。開示=渡り断絶の全容。引き=「帰れる航路が、計算上は、ある」 |
| 三 | 出資者 | 事件=街の分裂が票決の形に(行くか・守るか)。変化=ウシオの保険設計が議論を反転させる(「帰らぬ船の家に蝋が届くなら、送り出せる」——年寄衆が落ちる)。タタラの船金具・サチ×イサリの操船稽古(張り合いの開始)。引き=出航の朝、カヤ「……行っといで」 |
| 四 | 片道の海(往路) | 事件=航海。海峡の空殻・引き潮の群れとの初接触。変化=船上の五人+サチの結束(狭い船は嘘がつけない)。開示=群れの奥に「何か」がいる(引き手の気配・正体不明のまま)。引き=水平線にミナトの灯——半分、消えている |
| 五 | 知らない街の門 | 事件=ミナト着。今度はトモリたちが他所者(第1作序〜一章の逆再演——飯は出ない・門は閉じる・子供は逃げる)。変化=トモリが「信じてもらえるまで働く」を外国で再実行する決意。開示=ミナトの被害と怯え。引き=ミナトの子供「知らない人の火は、こわい」 |
| 六 | ミナトの百日 | 事件=防衛準備(門の補強・灯の配置——第1作で学んだすべての輸出)。変化=ミナトの協力の輪がゼロから動き出す(最初の味方はヨミ=飯でなく「結び」から)。イサナとモヤイの並行作業(まだ名を呼ばない・道具の貸し借りだけが進む)。引き=潮の色が変わる——早い |
| 七 | ミナトの迎え潮 | 事件=防衛戦本番(予定より早い襲来)。変化=イサナとモヤイが同じ門に立つ(和解は配置で)。守り切る——だが船が数隻、沖へ流される。引き=「帰りの潮が、もう狂い始めている」 |
| 八 | 帰り潮 | 事件=引き手との海上戦(本作の白眉——TDでも遠征でもない、海そのものとの戦い)。イサナの研究+ミオの読み+イサリの視る目+サチの舵=帰りの航路を、二十年ぶりに通す。変化=「片道の海」が終わる(一本だけ、往復の糸が通った)。開示=引き手は「潮を狂わせて何かを探している」ようだった——それだけ(凍結)。引き=フユナギの灯が見える |
| 九 | 渡り火 | 事件=帰還。二つの街が灯で結ばれる(渡り再生の一歩目)。変化=モヤイ「イサナ。……大きゅうなったの」(名を呼ぶ・§8-D指定の瞬間)。ヨミがトモリに沖灯の昔話を少しだけ——「沈んだよ。二十年、いや……もう少し前かねえ」(伝聞の曖昧さのまま・§10)。引き=ヨミの渡り唄を聴いたトモリの手が、勝手に結びを作っている |
| 終 | 次の帆 | 事件=エピローグ。渡りの手形の制定(ウシオの保険が制度になる)。変化=トモリの中で問いが外を向く(「ぼくの結びは、どこの結びなんだろう」)。開示=海図の「オキビ」の位置だけが判明——現況は誰も知らない。引き=海図の空白をひとり見つめるトモリ。胸の奥の疼きが、初めて「行き先」を持つ |
7. 街の分裂の構造(第1作「協力の輪」に対応する「説得の輪」)
行く派: カガリ(火消しの血)・オキヨ(飯の外交)・ホタル世代・イサリ(渡りの民の当然)守る派: ウシオ・年寄衆・復旧半ばの現実(彼らは正しい——ここを悪役にしない・凍結思想)転向の順序(設計): 年寄衆はウシオの保険で落ちる→ウシオは自分の発明に自分で説得される(信じない人が、信じないまま賛成に回る——第1作終章の「たまには」の続きの形)。最後まで反対の一人(名前なしの漁師)を残す——全会一致にしない(第1作の「信じない人がいるから街は本物」の思想の継承)。
8. 開く謎・閉じる謎(v1継承+精密化)
- 閉じる: モヤイの息子の生存(F-2回収)/渡り断絶の経緯の全容(F-4回収)/迎え潮の複数街性/芯守りの出所=沖灯の名(F-1の第一段回収)
- 開く: オキビの位置と現況(「まだ沈んだままか」)/引き手の正体(第3作)/トモリの断片の疼き——ヨミの渡り唄と子守唄が「同じ節」だと本人だけが気づく(§8-B凍結)
9. 【凍結・不変更の確認】第1作への接続点(PLOT_2§8)
A(芯守り=二重の返し結びに波紋の彫りが三つ)/B(子守唄の節の内容を書かない)/C(口伝の型)/D(イサナの名は第1作に出さない)/E(ミナトの固有名は第1作に出さない・「隣海」1回)/F(サチ・ヨミ・引き手の気配を置かない)——本書はすべて遵守・変更なし。
10. 【新設・凍結候補】第3作への接続点(オーナー承認で凍結)
- a. 引き手の正体・目的は本作で明かさない(「探している」の一語まで。答えは第3作=器を探す使い)
- b. ヨミの渡り唄の節・歌詞は書かない(トモリが「同じ節だ」と気づく描写のみ。歌詞の判明は第3作)
- c. オキビの現況(潜っている・灯台が生きている)は本作で一切示唆しない——「沈んだと言われている」の伝聞のまま終える
- d. 「二十年前に沈んだ」という伝聞の誤差を意図的に保存する(真実は7年前陥落=timeline凍結。遠い街では「海の変質の始まり(約20年前)」と「陥落(7年前)」が混同されて伝わっている——ヨミの「二十年、いや……もう少し前かねえ」の曖昧さはこの混同の設計。第3作で解ける)
- e. トモリの「後ろめたさの疼き」は本作で解かない(終章で行き先を得るだけ)
改訂ログ
- 2026-07-05 v2案(別窓・提案): v1の章立て10章を維持したまま各章を物語水準に展開。百日構造の三連(§2)・説得の輪(§7)・第3作接続点の凍結候補(§10)を新設。§8は不変更。