目次
dr10 — 第3作『帰り火のトモリ ―海の底の灯台―』フルプロット拡張案(v2案)0. この作品をひとことで1. 開幕の状況(精密化)2. 構造 — 三度目の「百日」(dr09§2の完結)3. トモリのアーク完成 — 「自分のため」を言えるまで、と、その先4. 真相部の整理(§4準拠・精密化+伝聞の誤差の設計)5. トウジ(番人)の人物設計 — ラスボスだが、悪ではない6. 章立て詳細(全9章・各章=事件/関係の不可逆変化/開示/引き)7. 最後の選択(3分岐)の物語設計8. 各キャラの完結(v1継承+精密化)9. 閉じる謎の全回収チェックリスト(TRILOGY§3-3+第2作で開いた分)10. 【凍結・不変更の確認】接続点検算(PLOT_3§7)改訂ログdr10 — 第3作『帰り火のトモリ ―海の底の灯台―』フルプロット拡張案(v2案)
作成: 2026-07-05 / 作成者: 別窓(物語設計担当) / 位置づけ: 提案書
(採用時はメイン窓が STORY_PLOT_3.md を v2 として改訂。**§7「第1作・第2作への接続点」は
凍結のまま一字も変更していない**。真相部の改訂は§7に影響しないことを§10で検算済み)
0. この作品をひとことで
「拾われた子が、還りかたを見つける話」。第1作=守る、第2作=届ける、を経て、最後は返す。ただし返すのは火だけではない——「もらいすぎた」と俯いてきた子が、受け取ってきたものの名前を知る物語。シリーズの問い「トモリは、何者なのか」にここで答えが出る。
- テーマ: 返す(世界に火を返す——そして「返しても、消えない」を知る)
- 問い: 「自分は、何者か」
- 答えの形: 器ではなく、トモリ。「配った火も時間も、ぜんぶ還る」が三度目に、今度はトモリ自身に起きる。
1. 開幕の状況(精密化)
第2作から約一年半後(トモリ17歳)。渡り網は三つ目の街を結び、海に「往復」が戻り始めている。
- だがトモリの断片は、疼きから痛みに変わっていく——ヨミの渡り唄を聴いてから、(a)子守唄を耳にすると手が勝手に結びを作る (b)夜、海の上の無数の灯りの夢を見て、泣きながら目覚める(なぜ泣いたか本人に分からない——感情が記憶より先に還ってくる)。
- 手がかりは一点に絞られている: 芯守りの意匠=沖灯の結び(第2作ヨミの同定)。オキビの位置は海図で判明済み・現況は不明(「二十年ほど前に沈んだと言われる」の伝聞のみ)。
- トモリは初めて、自分のために海へ出ることを決める——ただし、すぐには言えない。「自分のため」が、この子にはいちばん難しい(§3)。
2. 構造 — 三度目の「百日」(dr09§2の完結)
海に火を返すまでの百日。内訳(案): 決意と船団編成に三十日(フユナギ〜渡り網の街々)/オキビ海域への航海に三十日/海の底の灯台の攻略と祭祀に四十日。第1作「街の百日」・第2作「ふたつの街の百日」・第3作「海の百日」——拍は同じ、器が広がる。
3. トモリのアーク完成 — 「自分のため」を言えるまで、と、その先
- 序盤の山(序章): トモリは出自探しを言い出せない。「みんなの渡りの仕事があるのに、ぼくの用事で船を出すなんて」——受け取り下手の最後の砦。これを仲間が言わせる: イサリ「第1作で、あなたはわたしを先に信じた。今度は、わたしたちが信じる番だ——あなたの用事を」。カガリ「相棒の里帰りだろ。祭りじゃん」。ミオ「観測対象の原産地に興味があるわ(……早く言いなさいよ)」。——「ぼく、行きたいところがあります」をトモリが言えた瞬間が、序章の山(シリーズ全体で最初の「自分のためのお願い」)。
- 中盤: 沈んだ街並みに記憶が重なり始める(断片の答え合わせが一つずつ・§6)。
- 終盤の反転: 真相(器)を知ったトモリの動揺——「ぼくの百日は、ぜんぶ祭祀の続きだったの?ぼくの『配りたい』は、ぼくのものじゃなかったの?」。これへの反駁が仲間の総決算(イサリ「器じゃない。トモリだ」)。
- 最後の選択(§7)と結末: 返しても、消えない。器を空にしたトモリに残るのは、カヤの火と、七年ぶんのフユナギ(住民の灯時間・仲間の芯)——「もらいすぎた」の答えは「もらったものが、いまのお前だ」。存在レベルの後ろめたさ(プロット§2の①)がここで解ける。
- 最後の一語: フユナギの浜で「ただいま」。「おかえり。……湯が冷めるよ」(§7-E隣接・はぐらかしの定型が、ただの日常の言葉として返ってくる——シリーズの回収。F-10)。
4. 真相部の整理(§4準拠・精密化+伝聞の誤差の設計)
- 空殻の正体: 海と人の火は本来ひとつの循環(生まれるとき海から火を受け、死ぬとき送り火で海へ返す)。二十年前、大灯台の祭祀装置が壊れ、還れなくなった火の殻が空殻として漂い始めた。空殻が人を襲うのは「還り方を探している」から——第1作のバーク「ごめんね。……送り火、あげるから。」が、ここで世界法則の言葉になる(トモリは知らずに、ずっと正しい弔いをしていた)。
- 迎え潮の正体: 海が失った火を取り戻そうとする発作。悪意ではなく回収。
- 器の真相: 沖灯の一族は壊れた装置の代わりに、街ひとつぶんの火を生きた器に封じて時間を稼いだ。器=当時8歳のトモリ。儀式の代償が記憶の封印。
- 伝聞の誤差(明文化・凍結候補): 世間の「オキビは二十年ほど前に沈んだ」は、海の変質の始まり(約20年前)と陥落(7年前・timeline凍結)の混同。遠い街ほどふたつの出来事がひとつに畳まれて伝わった——ヨミの「二十年、いや……もう少し前かねえ」の曖昧さはこの設計。第3作で「七年前だ」と確定する(トモリの漂着と同年である衝撃が、ここで初めて読者に繋がる)。
- トウジの二十年: 装置の破損から陥落まで13年、祭祀で支え続けた。陥落の夜、器の儀式を施し、船で逃した(「いつか装置が直った日に、返しに来る」つもりで)。だが装置は直らず、彼は器を探す側に回った——引き手(第2作の敵)は彼が放った「器を探す使い」。イサリの船団が襲われたのは、渡り衆が器の行方を知る民だったから——イサリとトモリは最初から一本の糸で繋がっていた(「同じ浜から来たんだな」の三度目の意味)。
5. トウジ(番人)の人物設計 — ラスボスだが、悪ではない
- 沖灯の最後の灯守長。二十年、壊れた祭祀を独りで代行し続けて半分空殻化している(顔の半分が「還りかけている」——恐ろしさと哀しさが同居する造形)。
- 視点フィルタ: 世界は祭祀(すべてが「返すべきもの」。人の情も、自分の命も)。
- 口調: 古い祭文のような言い回し。「器よ。還る時が来た」。
- 欲求(表): 海を鎮める(目的はトモリと同じ)/裏: あの夜、船で逃した子に、謝りたい——だが二十年の代行が、彼から「謝る」という人間の作法を風化させた。
- 手段の対立(物語の核): トウジ「器を灯台に据えれば循環は戻る(器の意思と命は問わない)」vs トモリたち「祭祀を正しくやり直す(器から海へ、人の手で返す)」。——「人を数に入れない正しさ」と「人を数に入れる正しさ」の対決。イサリの「人を数で扱う者」への怒り(ペルソナ)がここで全シリーズの意味を持つ。
- カヤとの対比(設計): 知っていて黙り、育てた人(カヤ)と知っていて待ち、探した人(トウジ)。ふたりは同じ夜の裏表。終幕、トウジの送り火をカヤが浜で見送る(言葉なし・一枚の画)。
6. 章立て詳細(全9章・各章=事件/関係の不可逆変化/開示/引き)
| 章 | 題 | 中身 |
|---|---|---|
| 序 | 疼く結び | 事件=断片が痛みに(唄で手が動く・夢で泣く)。変化=「ぼく、行きたいところがあります」を言えた(仲間が言わせる・§3)。開示=オキビ行きの決意。引き=カヤが芯守りの緒を、黙って締め直す |
| 一 | 送り火の逆 | 事件=フユナギが送り出す(第1作の構図の反転——拾われた子を、街が海へ返す)。変化=カヤ「……あたしの火も、持っておいき」(初めて自分から分ける——七年前の反復にして逆転)。ウシオは最大の出資を「帳簿に載らないもの」を見ないまま行う。引き=出航。ホタルが桟橋で「いってらっしゃい」を練習してきた顔で言う |
| 二 | 渡り網 | 事件=渡り網の街々を経由し船団を編む(ミナト・イサナ・サチ・ヨミ再登場——シリーズの人間関係の総決算)。変化=ヨミが渡り唄の歌詞をトモリに教える(ここで初めて内容が出る——「海に火を返す唄」であることが判明する構成)。開示=唄=祭祀の唄(断片③の答えの半分)。引き=唄を歌えたトモリの頬に、理由のない涙 |
| 三 | 環礁 | 事件=オキビ海域到達。夜の海中に、灯り。「沈んでない。……灯ってる」。変化=船団の空気が畏れに変わる(ここから先は物語の外側の海)。開示=大灯台は稼働している(=誰かがいる)。引き=引き手の群れが、道を開ける(器を待っていた) |
| 四 | 海の底の灯台 | 事件=潜行・攻略前半(潮位ギミックの逆転=潜るほど引きが来る)。変化=断片の答え合わせ①②——街並みに手が覚えた道(結び=一族の手業)・沈んだ家々の灯りの跡(夢の灯り=沈む夜の街灯り)。トモリの記憶が「思い出す」のではなく「体が先に還っていく」恐さで描く。引き=灯台の扉。内側から、祭文の声 |
| 五 | 番人 | 事件=トウジとの邂逅。真相の開示(§4——空殻・迎え潮・器・襲撃の理由)。変化=イサリが自分の傷の真相を知る(船団は器を探す使いに襲われた——「守れなかった」が「狙われていた」に書き換わる。自責の解体)。引き=「器よ。還る時が来た」 |
| 六 | 器の中身 | 事件=トモリの動揺(§3の反転)と、仲間たちの反駁——イサリ「器じゃない。トモリだ」。番人戦(祭壇を巡る攻防——トウジは器を奪うのではなく「据えようとする」戦い)。変化=トウジが初めて動揺する(「なぜ器が、泣く」——彼の二十年が人間を忘れていたことの露呈)。引き=戦いの果て、トモリが自分から祭壇に立つ——「返します。ただし、ぼくのやり方で」 |
| 七 | 返し火 | 事件=祭祀のやり直し(最後の選択・§7)。器から海へ、火が還る——迎え潮の逆再生(海が受け取る画)。変化=空殻たちが次々と送り火の形で還っていく(第1作のバークの全回収)。開示=「返しても、消えない」(§3)。引き=空になったはずの胸で、火がひとつ、揺れている |
| 八 | 送り火 | 事件=トウジの結末——空殻化の進んだ体で祭祀の完了を見届け、送り火で海へ(第1作から貫いた「送り火」の意味の完成)。変化=イサリの「隣にいる」の完成形(帰路の舳先にふたり)。開示=カヤの余白は開かない(§7-E凍結——トウジも「あの婆がなぜ浜にいたかは、わしも知らん」で閉じる)。引き=フユナギの灯 |
| 終 | ただいま | 事件=帰航。「ただいま」。カヤ「おかえり。……湯が冷めるよ」(F-10回収——はぐらかしの定型が、ただの日常の言葉として返ってくる)。変化=シリーズの完結——「配った火も時間も、ぜんぶ還る」が三度目に響く。引き=なし(引きのない終章——これがシリーズで唯一「続きを予感させない」幕引き。凪) |
7. 最後の選択(3分岐)の物語設計
- ①全て返す(正史・大団円相当): §6の理路——返しても、トモリ本人の火は最初から別物(カヤの火+七年のフユナギ+仲間の芯)。「器を空にする」=「トモリになる」。
- ②器のまま装置に代わり続ける(番人の道): トウジの二十年をトモリが繰り返すバッド——選ぶとトウジが止める側に回る(「わしの二十年を、繰り返すな」——悪ではない敵の完成)。
- ③返さず逃げる: 街々に迎え潮が続く世界。フユナギに帰っても「ただいま」が言えない(第1作の百日が守った街を、今度は自分が沈める側になる)——テーマの裏返しで痛みを設計。
- 分岐の演出原則: ②③も「間違い」として断罪しない(选んだ理由に共感の余地を残す)。ただし正史は①のみ(シリーズ年表は①で凍結)。
8. 各キャラの完結(v1継承+精密化)
- イサリ: 傷の真相→自責の解体→「隣にいる」の完成。最終戦の役割=トモリの盾ではなく、トモリの隣(第1作序章の誓いの言葉が、七年越しに正確になる)。
- ミオ: 大灯台の祭祀=「読み」の究極形を解読する役。家業の完全な回復——「読みで人を守る」が「読みで世界を直す」まで届く。
- カガリ: 「預かり切る」の完成(最終ダンジョンで殿を預かる——弟の夜の完全な上書き)。
- モヤイ&イサナ: 親子で船団の舵。年長者たちの海への和解(「海との貸し借り」の帳尻が合う)。
- ウシオ: 変わらないことで完成する(「帳簿に載らないもの」を最後まで見ないまま、最大の出資)。
- ホタル: 灯し屋見習い2号として留守を守る——トモリの「教える側」の完成の証明。
- カヤ: 余白のまま(なぜあの浜にいたかは、どの作でも書かない・凍結)。終幕の「湯が冷めるよ」と、トウジの送り火を見送る一枚だけ。
9. 閉じる謎の全回収チェックリスト(TRILOGY§3-3+第2作で開いた分)
- ☑ トモリの出自・尽きない火・返し火の器の真意(§4)
- ☑ 記憶の三断片(①灯り=沈む夜のオキビ ②結び=芯守りの二重返し結び ③子守唄=祭祀の唄)
- ☑ 空殻の増殖の理由と迎え潮の源(火の循環の破損)
- ☑ イサリの「思い出せない襲撃」(器を探す使い——ただし襲撃の像そのものは最後まで戻さない・§7-C凍結。「知る」ことで解体し、「思い出す」ことはない——傷の癒え方の設計)
- ☑ 引き手の正体(第2作の開き)/オキビの現況(潜っている)/渡り唄と子守唄の節の一致
- ☐ カヤが7年前の浜にいた理由——回収しない(唯一の意図的な余白・凍結)
10. 【凍結・不変更の確認】接続点検算(PLOT_3§7)
- A(番人・オキビ現況・空殻正体・迎え潮正体を1・2作で示唆しない): 本書は第3作内の設計のみ。dr09§10で第2作側の遮断も明文化済み——整合
- B(三断片の答え): §6四章・二章の配置は§7-B①②③と一致——整合
- C(イサリの記憶回復は外周のみ・襲撃の像は戻さない): §9で「知るが思い出さない」を明文化——整合
- D(送り火の格=弔い→世界法則): §4・§6七章八章で完成——整合
- E(カヤの余白): §8・§9で不回収を再凍結——整合
- timeline(7年前陥落・トモリ当時8歳): §4伝聞の誤差の設計で「二十年前と言われる」と両立——整合
改訂ログ
- 2026-07-05 v2案(別窓・提案): v1の章立て9章を維持したまま物語水準に展開。トウジの人物設計・「自分のため」を言う序章の山・伝聞の誤差の明文化・3分岐の演出原則を新設。§7は不変更。